『そろそろ 絶望が 目をさますぞ。』

ある日、東の王国のお姫さまは、自分の寝室に閉じ込められてしまった。
部屋には3人の大臣が居て、お姫さまにこう言った。

「姫さまがお休みの間に、このお城は敵国に占領されてしまいました。」
『そんな馬鹿なことがあるものか。』
「敵方は姫さまを見つけ出そうと、城下から城中まで探し回っております。」
『そんな馬鹿なことがあるものか。』


殺されると聞かされては、お姫さまも寝室から出られない。
『して、妾はこれからどうなるのじゃ。』

「捕まれば、生きたまま串刺しにされて火で炙られます。」
『冗談ではない。生きたまま串刺し火炙りなど御免じゃ。』

「隠れていれば、やがて餓えて気が触れて悶え死にます。」
『冗談ではない。餓えて気が触れて悶え死ぬなど御免じゃ。』

「逃げ出せば、敵兵に辱められた上に首を刎ねられ晒し首です。」
『冗談ではない。妾には死に方ひとつまともなものがないのか。』
 
すると大臣の1人が毒入りの薬酒を差し出しました。

「これを飲めば、眠るように死を迎えられます。しかも楽しい夢を見ながらです。」
『ほう。それは一番ましで魅力的な提案であるな。
どう足掻いても死ぬしかないのなら、妾は一番楽な死に方が良いぞ。』

お姫さまは毒入りの杯を飲み干すと、大臣たちに感謝しながら、息を引き取った。